こぶれ2018年7月号
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みどりの風著・三軒茶屋ニコ 昨夏以来、映画を見ました。 孫が夏休みで来崎、遊びに行くところがないので「スパイダーマン」ともう一つ似たような3K(いや4K?)の活劇もの。 時間つぶしには格好だったが、その昔、円つぶらや谷プロの初期ゴジラたちが懐かしいほど。映画技術の進歩に驚きましたよ。 それだけに日本映画の良質な伝統を受け継ぎつつ、広い視点から「人間を描く作品はないのか」、この期待に応えてくれたのが、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに選ばれた是枝裕和監督「万引き家族」。 「観たいのに夏か秋になっちゃう」と予想していたら6月上旬に先行ロードショーが長崎であり飛びつきました。 04年に「誰も知らない」に主演した柳楽優弥がカンヌ国際映画史上最年少で主演男優賞を受賞した映画以来(縁もあり)是枝作品は二作目。 柳楽少年を主役に「人間を見つめる真しな眼まな差ざし」の作風に凄い監督と畏敬してきた。 で「万引き家族」息子役の城桧吏に柳楽を重ねました。 ダイヤモンドは原石をみがいて磨みがいてそれにする。 いきなりダイヤモンドでおどり出た柳楽。城はまだ原石でダイヤモンドでなかった〝彼〟にホッとしました。 どんな形でダイヤモンドになり輝いていくのか、やはり楽しみで嬉しいですね。 ふと城には「演技がまるで演技でないように見える」そんな永遠の課題に挑むことが出来るのでは……。それが是枝監督にできるかも。 「万引き家族」のスジは省略しますが、長年にわたり家族というテーマを追い続けてきた是枝監督の作品には、いつも輝きがあります。(たった二作品だけでおこがましいのですが……)。原石の輝きと魅力をいつも感じます。 「万引き」も社会の底辺から放たれる輝きをすくい取っています。 ていねいに、です。  コンビニなどからの軽犯罪を重ねながら都会の片隅で生きる家族。祖母の年金で細々と父、母、その妹、息子と幼い女の子の生きざま。いずれ破局が来ると予感しながらも生きるエネルギーや輝きを淡々と描いています。 是枝監督はテレビドキュメンタリー出身だけに記録映像的な作り方が特色。そのタッチが生かされ、役所の指示で別の親に育てられる息子と父が久しぶりに再会。 「無理やり泊まっていくように説得された」親子の会話。父と夕食のカップラーメンを食べ合うシーン。 積もった雪で親子が雪ダルマをつくるが、顔の片目が空いている。翌朝、南千住の都バスでの別れ、バスを追いかける父、バスの座席で素知らぬ顔の息子。 しばらくして後ろを振り返る――。苦にがく切ないシーンなのになぜか深い余韻が残る。 これが原案・脚本の是枝監督の真骨頂というものでしょう。 一見の価値ある映画として、おすすめします。 パルムドール賞「万引き家族」2

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